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4話. 犯人は、お前だ

Author: 6jay
last update publish date: 2026-09-26 21:58:15

午後二時、天城財団美術館三階のプライベートVIP応接室。重いマホガニーの扉が荒々しく開き、天城泰輝が殺気をまき散らして踏み込んできた。スーツは替えていたが、充血した目にはひどい疲労と、抑えきれない怒りが滲んでいた。

「勤務時間に統括理事を密室へ呼び出した理由は何だ、神崎」

――タッ。カチリ。

絵奈は泰輝が入るやいなや背後へ回り、応接室の扉を内側から二重に施錠した。ドアロックの音に泰輝の眉が上がる。絵奈は、先ほどより呼吸が少し楽になっているのに気づいた。泰輝の喘ぎも収まっていたが、睨み合うのに忙しく、その変化を問う余裕はなかった。

「勤務時間に上司を二人きりで閉じ込め、鍵までかけるとは。辞表が書きたいのか」

「辞表が大事ですか、今!」

絵奈はかけていた眼鏡を乱暴に外し、木製テーブルへ叩きつける。きちんと上げていた髪が頰を乱したが、瞳は毒を含んだ炎で燃えていた。

「天城理事。今日午前十時十四分、本社会議室で何があったんですか」

「何」

「役員会議の発表途中で突然休憩を宣言して、逃げるように出ていったそうですね。あのとき、体に何をしたんですか」

泰輝の表情が氷壁のように固まった。完璧だった人生で最も密やかで屈辱的な瞬間を、最も軽蔑していた犬猿の仲の口から確認される。

「言葉に気をつけろ。一学芸員がグループ後継者の私生活と動線を探るのは明白な越権だ」

「私生活!? それが理事ひとりの私生活なら、私があなたの顔なんて見ますか!」

絵奈が荒々しく踏み込み、スーツのラペルを両手で掴んだ。荒い吐息が頰に触れるほど危険に狭い距離。泰輝は反射的に絵奈の細い両手首を強い握力で攫い、冷たい壁へ押しつける。

――ドン。

背が壁に強く当たり、絵奈の唇から浅い悲鳴が漏れた。

「手を離してください、今すぐ!」

「一線を越えるな、神崎絵奈。その傲慢な態度をいつまで見てやると思う。私の胸倉を掴むのか」

「十時十四分に急に体の異常が出たんでしょう。私もその時刻、収蔵庫で倒れました。偶然にしては正確すぎます」

その瞬間、泰輝の完璧な冷静の仮面が砕けて崩れた。

「……それを、お前がどう知っている」

低く沈んだ声がわずかに震えた。会議が中断したことは知れ渡っていても、理由を絵奈に話した覚えはない。

なのに目の前の女は、同じ時刻に自分も倒れたと言った。泰輝は掴んでいる手首を見下ろした。

「どうしてかって? 十時十四分にあなたがそうなったせいで……私が収蔵庫の床でどんな目に遭ったか、分かってますか!」

絵奈の目尻に、極度の羞恥と悔しさで熱い涙が浮かぶ。

「ただ作業着の裾が擦れただけなのに……下が裂けるみたいに熱く濡れて、座り込んで喘いだの。産婦人科の先生は私を、自慰で過敏発作を起こした患者みたいに扱った。生まれて初めての屈辱よ!」

押し殺した憤りを吐き、掴まれた手首をねじり、泰輝から体を離そうとした瞬間だった。

――パチッ。

二人の手首と、薄い生地越しの胸が激しく触れ、体温が混ざる。骨の奥の神経系で、正体不明の電気火花が散った。

「んっ……!」

絵奈の腰が弓なりに反り、顎が後ろへ折れた。泰輝の強い掌が掴む手首だけではなく、絵奈の腿のあいだ、いちばん密やかな花弁の内側で、抑えきれない激しい収縮が起きた。

その粘つく熱い収縮は、そのまま泰輝のズボンの内側、股間へ滝のように流れ込んだ。

「はあ……くそっ」

泰輝の顎が痙攣するように固まり、瞳孔が快楽の恐怖で緩む。絵奈の膣口が締まり、熱い分泌が溢れる、その微細な粘膜の震えが、自分の硬い表面に生身を擦りつけるように露骨に伝わってきたのだ。

ズボンの前が瞬く間に制御不能に膨らみ、絵奈の太腿の内側を鈍く熱く圧迫する。壁に押しつけられたまま、獣のように荒い息をつき、揺れる瞳を見つめ合った。すべての状況と疑いが、鳥肌の立つ一つの真実へ収束する。

昨日、収蔵庫で切った指。古代遺物『合璧印』にともに染み込んだ二人の血。

「……合璧印だ」

泰輝が絵奈の耳元へ、火傷しそうな熱く危険な息を吐き、低く呟いた。

「あの忌々しい古代遺物のせいだ」

「理事……今、当たってるの……外してください……」

絵奈は赤く染まった頰を痙攣させ、唇を血が出るほど噛んだ。泰輝の冷たく、同時に猛烈に熱を持った唇が、絵奈の耳たぶを掠めそうな距離まで寄る。

「神崎。今の痙攣は……お前が感じたのか。それとも、私が興奮したせいで、お前の体が濡れたのか」

社会的抹殺という崖の端で、二人の危険で粘つく地獄の門が、ついに大きく開いた。

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